アステカ王国は、15世紀から16世紀にかけてメキシコ高原を中心に広大な領土を支配していた強大な帝国でした。しかし、その栄光も短く、16世紀初頭にはスペインの征服者たちによって滅亡してしまいます。なぜ、これほどまでに力を持っていたアステカ王国が、スペインの侵攻によって崩壊したのでしょうか？本記事では、アステカ王国が滅亡した背景と、その主要な要因について解説します。

 

 

スペインの侵攻とアステカ王国の崩壊

アステカ王国が滅びた最大の理由は、スペインの侵攻です。1519年、スペイン人の征服者エルナン・コルテスは、少数の兵士を率いてアステカ王国の領土に到達しました。アステカの首都テノチティトランは高度に発展した都市で、約20万人が住む巨大な都市国家でした。しかし、コルテスは単なる武力だけでなく、巧妙な戦略を用いてこの帝国を崩壊させたのです。コルテスは、アステカに反抗的だった他の先住民族を味方につけ、アステカ王国を孤立させました。

 

コルテスはトラスカラ族をはじめとする反アステカ勢力と同盟を結び、アステカ帝国への侵攻を成功させます。少数のスペイン軍だけではアステカ王国を倒すことは不可能でしたが、同盟軍との連携によって兵力を補強し、首都に迫ることができたのです。

 

疫病がもたらした壊滅的な打撃

アステカ王国の滅亡には、天然痘などの疫病が大きな影響を与えました。スペイン人が持ち込んだ疫病は、アステカ人に免疫がなかったため、瞬く間に広がり、壊滅的な被害をもたらしたのです。アステカの人口は、天然痘の流行によって急激に減少し、社会全体が機能不全に陥りました。

 

特に、テノチティトランを支配していた王室も例外ではなく、王や貴族が次々と病に倒れ、国家の指導力が著しく低下しました。疫病による人口減少は、アステカの軍事力を大幅に弱体化させ、スペイン人による侵略をさらに容易にしました。この病気の蔓延は、アステカ帝国の崩壊において非常に重要な要因だったのです。

 

アステカ帝国内部の対立と反乱

アステカ王国内部には、複雑な政治的・社会的な対立が存在していました。アステカ帝国は、その強大な軍事力によって周辺の部族を支配していましたが、この支配体制は必ずしも安定したものではありませんでした。アステカは征服した部族に対して厳しい貢納制度を課し、反感を招いていたのです。この不満が、スペイン人の侵攻を機に一気に噴出し、多くの先住民部族がアステカに反抗しました。

 

特に、トラスカラ族はアステカのライバルとして、長年にわたって抵抗していた部族であり、彼らの協力がスペイン人にとって大きな力となりました。アステカ帝国は、内部の反乱と外部からの侵略という二重の脅威にさらされ、次第にその支配力を失っていったのです。

 

宗教と文化の圧力

スペイン人によるアステカ王国の征服には、宗教的・文化的な衝突も大きな役割を果たしました。アステカ人は、多神教を信仰し、人身供犠を行う文化を持っていましたが、スペイン人はこれを「異教の野蛮な習慣」と見なし、キリスト教による「文明化」を正当化しました。スペイン人は征服地にキリスト教を広めることを目的とし、アステカの神殿を破壊し、キリスト教の教会を建てました。

 

こうした宗教的な圧力により、アステカ人の伝統的な文化や宗教は徐々に抑圧されていきました。征服者（コンキスタドール）たちは、キリスト教の布教を通じて支配の正当性を主張し、アステカ社会に精神的な変革を強要するようになります。これにより、アステカ王国の伝統的な社会基盤は崩壊し、文化的にも衰退していったのです。