大航海時代は、ヨーロッパ諸国が新たな貿易ルートや領土を求めて海へと乗り出した壮大な探検の時代です。そんな冒険の背後には、多くの専門職の人々が支えていました。その中でも、航海士は航海の成功を左右する重要な役割を担っていたのです。彼らは海図の読み方や天体観測など、高度な知識と技術を駆使して船を安全に目的地まで導きました。本記事では、大航海時代の航海士がどのような役割を果たしていたのか、その職業に迫ります。

 

 

航海士の基本的な役割

大航海時代において、航海士の主な役割は船を正確な航路に導くことでした。これは、現在のGPSや現代的な航行技術がない時代において、非常に困難で重要な任務でした。航海士は海図とコンパス、さらに天体観測を組み合わせて自らの位置を確認し、船がどの方向に進むべきかを決定しました。この技術は「航法」と呼ばれ、特に大海原では命を預かる重大な技術だったのです。

 

とりわけ、星の位置や太陽の高度を測る「六分儀（セクスタント）」や、コンパスなどの航海用具を使いこなすことが求められました。海上では天候や海流の影響で容易に迷子になる危険があり、航海士の経験と判断力が船の安全を保証するカギだったのです。

 

航海士の階級と組織

航海士の役割は単独ではなく、複数の航海士が役割を分担して行っていました。大きな探検船や商船には、通常「船長航海士」（マスター）と「副航海士」（メイト）が配置され、それぞれが異なる職務を担っていました。船長航海士は航路全体の計画や指揮を執る役割を果たし、副航海士は実際の航行や甲板上での作業を監督する役割を担いました。この分業体制は、長い航海中でもミスを最小限に抑えるために重要だったのです。

 

さらに、航海士たちは船員全体に対してリーダーシップを発揮する必要があり、時には天候や嵐の中でも冷静に指揮を執らなければなりませんでした。航海士たちの冷静な判断とリーダーシップが、船を無事に目的地へと導くために必要不可欠だったのです。

 

航海技術の発展と航海士の役割拡大

大航海時代は、航海技術が急速に発展した時代でもありました。この時期、ヨーロッパの技術者たちはより正確な航海用具を開発し、遠洋航海を可能にしました。例えば、マゼランの世界一周航海やコロンブスのアメリカ到達は、優れた航海士たちの技術があってこそ成功したものです。航海士たちは新しい航海用具や技術を習得し、航路開拓に大きく貢献しました。

 

また、新しい技術により、航海士の役割は広がり、より広範囲の海域で活動できるようになりました。以前は沿岸部に限られていた航海が、より遠くの大洋へと向かうようになり、航海士たちは地図に載っていない未知の海域を探検する任務にも当たりました。こうした役割拡大に伴い、航海士の地位はますます重要視され、国によっては探検航海を成功させた航海士が高い名声を得ることもありました。

 

リスクの大きい航海士という役職

航海士の職業は非常に名誉あるものでしたが、危険も多い職業でした。航海中には嵐や暴風雨、海賊の襲撃など、予測不能なリスクが常につきまとっていたからです。また、長期にわたる海上生活は食糧不足や病気といった問題にも直面します。特に、熱帯地域を航海する際には疫病のリスクが高く、航海士含め、多くの乗組員が命を落としました。

 

しかし航海士はこうした厳しい状況下でも、乗組員の安全と船の航行を確保する責任がありましたし、それでもなお、冒険心と新しい発見への期待、野心から、厳しい遠洋航海に挑み続けたわけですね。